クローラクレーンやラフタークレーンなどは毎年検査だらけでメンテナンスや保全が大変!というお話を聞いたことがありましたので、実際にどのような検査が必要なのかを解説します。
細かい専門用語等は読みにくい(筆者が苦手だから…)でしょうから、なるべく噛み砕いて解説していきます。
販売前の検査(クレーン等安全規則より)
製造検査
これは製造した移動式クレーンが申請通りの性能を発揮できるかを検査されます。
検査は所轄都道府県労働局長のもと行われ、検査内容は、
- 構造や機能の点検
- 荷重試験
- 安定度試験(2種類)
などあらゆる内容を検査されます。
製造検査を受けるためには、
- クレーン明細書
- 構造部の強度計算書
- 組立図
を添付して製造検査申請書を出す必要があります。
この製造検査を合格すると、その後の同型機種については添付資料が免除されるようです。
しかし、誰でも製造検査を受けることができるわけではなく、なんとクレーンを製造する前から検査があります。それが製造許可といわれるもので強度計算基準や設備、設計者や工作者の経歴まで提出しなければなりません。
使用検査
これは聞いたことがない方の方が多いと思います。使用検査は以下の方が受ける検査となります。
- 移動式クレーンを輸入した場合
- 海外で移動式クレーンを製造して国内に持ち込んだ場合
- 製造検査後、2年以上設置届をしなかった場合
使用検査でも製造検査と同等の検査を実施されます。
移動式クレーン検査証の交付
製造検査や使用検査を無事にクリアすると都道府県労働局長から移動式クレーン検査証が交付されます。またこの時に交付される番号が、機械にも刻印されます。
これはクレーン1台に1枚しか交付されない証明書なので絶対に紛失してはいけません。
検査証の有効期限は2年ですので、2年以内に性能検査を受ける必要があります。
購入してからの検査
設置届
移動式クレーンを購入したら、使用する前に所轄監督署へ設置届を提出しなければなりません。これを怠ると使用検査ということですね。
定期自主検査
クレーンを設置したら1年毎に自主検査を行う必要があります。この点検記録は3年間保存することも義務付けられています。
- 各部の点検
- 荷重試験
これは事業者の責任で行う必要がありますが、資格を持った業者へ依頼することもできます。
事業者が自ら行うよりも、知識・技術に長けた建機専門の修理業者などへ依頼することが多いようです。
性能検査
これは継続検査、クレーン検査、揚検など地域で様々な呼び方があるようですが、クレーン等安全規則では”性能検査”が正式名称です。
これは自動車で言う車検のようなもので、検査証の期限である2年以内に受けることで、2年の延長更新を受けることができます。
性能検査を受けるには登録性能検査機関へ依頼することで受験可能です。
例外編
以上が移動式クレーンを使用する場合に受けなければいけない検査となります。しかし、他にも受けるべき検査というものが多数ありますのでいくつか記載します。
特定自主検査 通常:特自検
移動式クレーンのアタッチメントをフックではなくハンマグラブやオーガーなどに変更して掘削などの土木基礎作業を行う場合は、移動式クレーンではなく、車両系基礎機械としてみられます。
そのため建荷協(建設荷役車両安全技術協会)がさだめる特自検を受けなければなりません。
変更届と変更検査
下のリストにある部位に変更を加える場合は、変更を行う30日前までに、所轄監督署へ変更届を提出する必要があります。
- ブームや構造部分
- 原動機(エンジン)
- ブレーキ
- 吊り上げ機構
- ワイヤロープ
- フックなど吊り具
- 台車(クローラ、キャリア、台船など)
これらの変更時に届出を怠ると、最悪50万円の罰金を科される可能性が有ります。
また、上リストの1番と7番はクレーンの性能に大きく関わるため、変更届を提出した際に変更検査が必要と通達されます。
変更検査では性能検査同等の点検が必要です。さらに荷重試験では過荷重試験と安定度試験が実施されます。
- 過荷重試験 定格の1.25倍(125%)
- 安定度試験 定格の1.27倍(127%)
普段はML(過負荷防止装置)によって制限される領域での試験となるため、急操作や慣れないオペレータでは危険を伴います。検査官の指示をよく聞き、慎重な操作を行なってください。
車検(自動車継続検査)
タイヤで公道を走行可能なクレーンは、車検を受けナンバープレートを交付されないと公道走行は認められません。
車検に合格すると大型特殊自動車として車検証とナンバープレートを交付してもらえます。
もちろん2年ごとの継続検査と法定点検が必要となります。
最後に
これらの検査を受けてクリアするためには、定期的なメンテナンス・修理が必要です。
ひとつでもクリアできない場合は、クレーンを用いた事業に大きな影響が出ることに加え、関係者からの信用問題にも繋がります。
また、期日までに再検査の申請を出し、再検査までに指摘箇所を修繕・修理が必要となりクレーン業者も修理業者も大変な労力がかかることにもなり得ます。
クレーンを円滑に運用するためには、オペレーターは異常を感じたら、いち早く最寄りの整備工場へ的確に状況を伝えることが大事です。
急で高額な修理を抑えるためには、日々のメンテナンスが重要です。
コメント