TADANOホームページに「未来の建設現場を支える「AI研究開発」のご紹介」というニュースリリースがアップされていました。
研究開発に至る背景
日本における少子高齢化はかなり深刻な問題となっており、内閣府の発表では日本の総人口は1億2,550万人(2021年10月)、高齢(65歳〜)化率は28.9%、生産年齢人口(15〜64歳)は59.4%となっています。
2065年には総人口は8,088万人、高齢化率38.4%、生産年齢人口51%になると試算されています。
2021年
- 総人口 1億2,550万人
- 高齢者 3621万人 28.9%
- 生産年齢人口 7,450万人 59.4%
2065年
- 総人口 8,808万人
- 高齢者 3,381万人 38.4%
- 生産年齢人口 4,529万人 51.0%
現役世代が減少するほどに熟練したクレーンオペレータも減っていきます。さらに技を伝えていく若手も減少し続けることになるでしょう。
そんな中、技術革新によってクレーンの操作を簡易化、部分的な自動化を図り、将来的には自律化まで見込んで研究開発を進めているとあります。
現在の成果
発表のなかでは株式会社DeepXというスタートアップ企業と共同で、クレーンの3連操作(旋回・起伏・ウィンチ併用)での荷振れの抑制をテーマにおいて一定の成果を得られているそうです。
クレーンの3連操作とは?
クレーンにおける3連操作は、基本動作の組み合わせになります。
しかし、いかに基本の操作といえど複合操作となると格段に難易度は上がり、目標地点で荷を揺れないようにするには卓越した技能が必要となります。
さらにスピードも求められるとエンジンのアクセルワークも加わるため、1から10まで教えられてできるものではありません。
どうやってAIが3連操作をこなせるようになるのか?
人間と同じでひたすら反復練習と、評価を繰り返していくみたいです。
しかしAIの練習場所は実機ではなく仮想空間上のシミュレーションです。
仮想空間で荷振れに関するスコアを向上させるよう、ディープラーニングを繰り返し学習させ、あたかもベテランオペレーターのようにクレーンを動かせるようになります。
熟練オペレーターの減少にともない、TADANOのような技術革新がどんどん進んでいくことでしょう。
そして今年発表のあった2023年に完全電動RTCも控えています。”電動化”と”自動化”が今後のホットワードになること間違いなしですね。
ベテランは消えゆくのか?
いえいえ、すぐにそんな事にはならないはずです。仮に自動運転のクレーンが世に出たとしてもあなたの周りのクレーンが全て新車に置き換わるのに何年かかることでしょうか?
その間、熟練オペレーターとしての市場価値は、どんどん上がっていくと予想されます。AI搭載クレーンは若手ばかりの市場からしたら魅力でしょうが、今も技術に磨きをかけているベテランオペレータの安全に作業を遂行するという途方もない経験値には足元にも及ばないことでしょう。
さらには海外労働者への資格取得の緩和なども進んでいくこととでしょうし、世界基準のルール、機械作りが求められるようになると思います。
今も昔も、ベテランが若手に技術を伝えながら安全に街を発展させていくという構図は変わらないはずです。
しかし、確実に世界を構成する機械や技術は進歩発展していきます。ベテランだから引っ張りだこという時代もいつかは、はるか過去の栄光になるかもしれません。
もしかしたら、ベテランが伝える相手がAIになるかも?そんな未来が来るのもすぐそこかもしれませんね。
補足資料:人工知能の学習について
上の解説はとてもわかりやすいAIの学習の様子になります。
コメント