荷を運搬する際に活躍する移動式クレーンにおいて、時折耳にする電波障害について解説します。
電波障害とは
読んで字の如く、空中を飛び交う電波によりクレーンの制御装置コントローラに不具合を発生させたり、フックが導体(金属や人)に触れた際に電撃や火花を発生させる現象のことを言います。
電波障害はなぜ起こる?
電波障害が起こる原因は、なんと空高くそびえるブームとワイヤが受信アンテナとなるからです。
特に障害となり得る電波は中波ラジオ(AM)の電波であるとのことです。
このAMラジオに使われている中波は広く届き、FMラジオとは周波数も低いものが使われています。なんとAMラジオはとても単純な方式なので電源のなしで受信できるラジオ機器もあるらしいです。
そんな単純で使いやすい電波であるが故に、クレーンのブームやワイヤが受信アンテナとなってしまうようです。
周波数とか振幅とかがブーム長さにより共振するからとか論文がたくさんあります。
どんな不具合が起こるのか?
現象はさまざまで、アンテナからの距離やブームの長さ、角度によっても変わるそうです。
- 過負荷防止装置の計器が狂う
- 帯電したフックが発熱する
- フックに触れるとビリっと感じる
- フックが導体に触れると火花が散る
- ワイヤからラジオの音が聞こえる
など中には信じられないものまであります。
この中でも危険なものとして過負荷防止装置などの景気の異常とフックの帯電です。
過負荷防止装置MLなどの安全装置の数値が異常になると、機械は安全かどうかを正常に判断できなくなり、最悪の場合機械の転倒など重大災害になりかねません。
そして、フックやワイヤが帯電すると、発熱したり、玉掛けワイヤなど導体に触れた瞬間火花が飛んだりします。
対策は?
若い世代の人たちには馴染みがないかもしれませんが、ラジオのアンテナはさまざまな工夫で音の入りが変わります。
つまり、アンテナであるブームに工夫を加えることで受信状況を変えることもできるということです。
MLなど計器の狂いに対して
ブームや機械に張り巡らされている配線などがノイズを拾うことで起きるとされています。
外部からのノイズに対してはシールドと言われる金属の網が入ったケーブルに変えることで軽減できます。が、最近のクレーンの重要なケーブルにはもともとシールドが施されているため、さらなる対応が必要です。
以下のような配線を挟むように使うノイズ低減商品も多数あり、比較的容易に障害を取り除くことができます。ノートパソコンの電源ケーブルやモニターケーブルなどにも標準的に備わっているものになります。
上のような製品が直ぐに手に入らない場合、1番簡単なのは移動式クレーンの強みでもある、移動できるということを利用し、作業位置を変えてみることです。
AM電波はビルや山などを回り込むため入り組んだところでも聞くことができるのですが、位置を変えるだけで症状が軽減される場合が多々あります。
その場所探しに有効な手として、クレーンに備え付けられたAMラジオを聴きながら、聞こえにくい位置を探すことが可能なようです。
ラフタークレーンなどであれば、ブームを縮めてみたりブームとジブの角度を変えるなども有効です。
次にケーブル類にアルミホイルを巻くことも有効と言われています。とても大変な作業ですが、ひと月も稼働するとアルミが焼けてボロボロになるそうです。それだけ中のケーブルを守ってくれているということなのでしょう。
ワイヤ・フックの帯電について
電波を受け取ったブームは電磁誘導によって電荷を帯びます。それがアースである地面に近づくとバチっと火花が散るのです。
対策としては絶縁効果を持った吊り具を使うことや、フックに絶縁体を巻き付けるなどが有効とされています。
また、初心者考えですが、待機中はフックを敷き鉄板などに設置させておくことも有効かもしれませんね。電波を受けても常にアースに落としてあげることで逃がせるのではないかな?と思います。
電波障害の確認方法
電気テスターを用いて簡単に電波障害の程度を知ることができるらしいです。
- まずフックを鉄板付近に降ろします
- テスターでフックと敷き鉄板間の電圧を測定します
AC/DCどちらも計測しておいた方がいいようです。
通常は地面と機械の電位差はともに0Vのはずですが、電波障害により電化を帯びている場合は機械側がプラスに帯電し、機械と敷き鉄板の間に電位差が生じます。
電波障害のある現場が終わったら必ず点検を
過負荷防止装置の数値がおかしいからといって必ずしも電波障害ではないかもしれません。
電波障害を疑われる現場から会社に戻ったら必ず点検をしましょう。
それでも数値に異常が見られる場合はセンサもしくは、過負荷防止装置が故障している可能性があります。
目に見えない電波によりクレーンが正常に稼働できない場合はとても危険です。
電波障害の可能性を感じたらすぐに現場責任者に相談し、対策を講じましょう。
コメント