コベルコ建機の主力製品である油圧ショベルに関し、エンジンの代わりに水素を駆動源とした燃料電池式電動ショベルの試作と稼働試験を開始とのニュースが発表されました。
グループの強みを活かした戦略か
グループのトップである神戸製鋼所は以前から水素に関する研究開発を行ってきており、2022年には水素社会実現に向け、水素ステーションの実証実験を開始しています。
神戸製鋼所が水素ステーションをパッケージとして販売、全国に普及を目指し、建機部門であるコベルコ建機が水素を駆動源とした建設機械を普及させる。
グループの強みを活かした環境対策戦略とみられます。
今年の5月に小松製作所もコベルコ建機と同じくトヨタ製の水素タンクと燃料電池システムを搭載した燃料電池ショベルコンセプトを発表しており、建機業界にも新たなトレンドとして水素利用の可能性が高くなってきたように思います。
脱炭素化のトレンドはどちらか?代替燃料と電動化
自動車業界では一時期EVブーム一択かと思われていたが、現在では完全なEV移行という印象は薄れ、低燃費化やハイブリッド、水素やバイオ燃料など、様々な選択肢が再浮上してきている印象を受けます。
まだまだ脱炭素へ向け発展途上にある建機業界もさまざまな選択肢が思案されている段階と感じます。
代替燃料
欧州や南米ではバイオ燃料は珍しいものではなく、合成燃料やGTL燃料などが研究されています。
これらは現行のディーゼルエンジンに手を加えることで内燃機関やすでに稼働しているインフラ設備をフル活用できることがメリットとして挙げられますが、完全なカーボンフリーを実現することは難しく、実現されたとしても燃料コストは上がる可能性が示唆されています。
また、内燃機関を動力としているため熱や振動、騒音も発生してしまいます。
電動化
いわゆるEV化と言われるものはエンジンを電動モーターに、燃料タンクを大容量バッテリーに置き換えたものになります。
エンジンで燃料を燃やすということがないため機械単体で見ればCO2排出は完全なゼロを実現可能です。
しかし、バッテリーに供給される電力の発電方法によってはCO2を排出するため、システム全体で見た時のカーボンフリーについては議論されているところです。
LiebherrはすでにUnpluggedというシリーズでバッテリー搭載の電動クレーンを販売しており、外部から電源ケーブルを繋ぐことでバッテリー残量に影響されない稼働が可能です。
TADANOもEVOLTというラフテレーンクレーンを販売予定と発表しており、世界初の完全なカーボンフリーEVラフターとして期待されています。
対するKATOはハイブリッド方式の低燃費ラフターを販売予定と告知しています。詳細は未発表ですがおそらく自動車と同じようにエンジンの出力をアシストするのか、一部の動力を電動モーターに出力させるのかは分かりませんが、こちらも期待して続報を待ちたいと思います。
水素を用いた燃料電池は両方のメリットを持ち合わせるか
コベルコが今回発表した燃料電池式電動ショベルに期待される点として、代替燃料方式と電動化方式の両方のメリットを持ち合わせていると考えられます。
まず発電方法が水素と酸素の化学反応であるためCO2は排出されず、水H2Oのみが排出されます。
CO2を出さない発電機によって電力を生み出し、排熱や振動、騒音も小さな電動化によるメリットは多数あるように思われます。
唯一の懸念は供給インフラ
上述のメリットを最大限に活かすには建設現場にストレスなく水素を供給できるかにあると考えます。
施主や施工会社が環境性能に多いに関心を示し、国や自治体からも助成があるなど、社会全体としてのバックアップがなければ実現は難しいのではと感じてしまいます。
クレーンへの採用もあるのか
同発表の中では今後のクレーンについても触れており、2025年に国内向け有線式電動仕様機の販売を計画中とされています。
どのクラスの機種を計画しているのかも気になるところです。
また、燃料電池搭載は無いようですが、バッテリー搭載の有無や発電機のパッケージ販売なのかなども注目です。
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