前回、クローラクレーンとテレスコクレーンの違いから少し話を膨らませてクレーンの呼称と種類について解説記事を載せました。
今回はこれらの種類ごとこの特徴を踏まえ、主な使われ方について解説したいと思います。
ラチスブームクローラクレーン
ラチス構造のブームを繋いでいき組み立てるクローラで走行を行うクレーン。
テレスコピック構造のブームに比べブーム自重が軽く、旋回速度に優れ、重量物作業もこなせる。
最大吊り上げ能力は50〜200トン級がよく見かける。さらに大型になると1000トンを超えるような超大型機種も存在する。
傾斜クレーン仕様
ブーム先端からフックを上げ下げしクレーン作業を行う。用途によってブーム長さを変更する場合は中間ブームを継いでいく。
土木・クラムシェル仕様
フックの代わりに特殊なアタッチメントを搭載した仕様。
クラムシェルでは木材チップや石材など玉掛けしにくい細かい品物をすくいあげる。
ハンマグラブを装着すると地面の掘削も行うことができる。
ラフィングタワー仕様
ブームの先にジブを取り付け、高さに加え、作業半径を大きく取ることができる仕様。ビル建設など高さと奥行きが必要な建築で使われることが多い。補巻ウィンチをジブ起伏として使う機種はフックをひとつしか使用できなくなる。
テレスコピッククローラクレーン
ラフターのような伸縮ブームを搭載したクローラクレーン。
メリットは組立工数が少なく、ラチスブーム式と違い任意の長さにブーム長を変えることが出来るため、すぐに現場稼働ができる。
ブーム長は最大30メートル前後のものが多い。
ブーム長をすぐに調整できることから、リーダーとオーガーと言われるアタッチメントを装着しての基礎土木作業に使われることも多いよう。
このあたりはまた別の機会に解説記事を掲載したいと思います。
テレスコピックブームホイールクレーン
伸縮ブームを持ち、タイヤで走行するクレーン。
アウトリガを張った作業姿勢
条件を満たすことで大型特殊自動車として行動走行が可能。組立不要で現場到着後すぐにクレーン作業ができるタイプと、ウェイトやブームの取付など組み立てが必要なタイプとに大別される。
クローラクレーンとの大きな違いは最大の能力を発揮するためにはアウトリガと呼ばれる足を広げる必要があることだろう。
ラフテレーンクレーン
通称ラフターひとつの運転席で走行とクレーン作業を行うことができる。
最大吊り上げ能力4.9トンから100トンまで様々なラインナップがある。70トンより上の機種はカウンタウェイト搭載など組立作業がある機種が多いよう。上の画像はタイヤが4つの2軸式だが、大きなクラスになると軸重分散のため3軸や4軸のタイプもある。筆者はタイヤがいっぱいあるとかっこいい。
ちなみに4.9トンは5トン未満のため小型移動式クレーンに分類される。
オールテレーンクレーン
通称オルター。走行用とクレーン操作用の2つの運転席を持つホイールクレーン。
ラフターよりも優れた揚程(高さ)と吊り上げ能力を誇る。最近TADANOから700トンという超弩級のオルターが発表された。海外にはまだまだ大きな機種もある。
走行用とクレーン用でエンジンが2つの機種が多いが最近はひとつのエンジンで量操作ができるものもある。
ほとんどの機種でカウンタウェイトやブームの脱着など組立作業が必要。
やはりタイヤがいっぱいあるとかっこいい。
ラチスブームホイールクレーン
最後に珍しい?変わり者?なクレーンのご紹介。
コベルコからでているMK650という機種は、ホイールで走行し、アウトリガを張り出すが、さらにクレーン作業を行うためにはカウンタウェイトの搭載と、ラチスブームを接続して作業にあたる。条件を満たすと行動走行も可能。
主に港湾で使われることが多いようだ。
なぜ港湾に向いているのか?
まず、船からの荷下ろしや積込みは、船の停泊料を抑えるためにもなるべく早くこなしたい。そのためには軽量とされるラチスブームが好ましい。
さらに日本の港のほとんどは市や県が管理する公共の施設であることが多く、舗装面に傷の入るクローラ乗り入れ禁止と言われる港が多いそうだ。油圧ショベルのようにゴムシューを付けた特別なクローラクレーンもあるらしい。
さらに港は広い。走行速度の遅いクローラ式よりも機動性に優れるホイール式の方が利点が多いのだそう。
以上の特徴を踏まえて生み出されたのがラチスブームを持つホイールクレーンMK650なのだ。
MKも面白いクレーンなのでいつか詳しい記事を書きたいと思います。
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