クローラクレーンとラフタークレーンの違い

クレーン解説
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最近当サイトへのアクセス解析を行うと、

「クローラークレーン ラフタークレーン 違い」

という検索ワードが多くありましたので、いろいろな視点から違いについて解説していきます。

クローラークレーンとは?

以前にも解説記事を掲載しましたが、クローラで走行するクレーンはブームアタッチメントの種類にかかわらずクローラクレーンとなります。

ですが、一般的にはラチスブームをもつクローラクレーンのことを通称”クローラクレーン”と呼ぶことが多いですね。

ラフタークレーンとは

タイヤで走行するホイールクレーンの中でも、ひとつの運転席で走行とクレーン作業ができるテレスコブーム搭載のものをラフテレーンクレーンといい、通称”ラフター”と呼ばれます。

ラフテレーン[不整地]という意味で、大きなタイヤで不整地である工事現場に乗り入れ可能なクレーンという意味です。

クローラとラフターの違い

ラフターの移動方法

まずラフターですが、車検を受けナンバープレートを取得するコトで大型特殊自動車として公道走行が可能になります。

車体の重量やサイズによって通行条件が付加されます。

  • A条件 規制なし
  • B条件 徐行、連行禁止
  • C条件 徐行、連行禁止、誘導車
  • D条件 徐行、連行禁止、誘導車、他車並進禁止、夜間走行など

連行とは特殊車両が2台以上連なって走ることを言います。橋などへのダメージを防ぐため、連行禁止となります。

他車並進禁止とは2車線内に他の車を走行させてはならないということになります。

クローラクレーンの移動方法

次にクローラクレーンですが、現場構内はクローラーによる自走が可能ですが、公道に乗入れは出来ません。

そのため、トレーラーに積載可能な重量・寸法まで解体して輸送する必要があります。

分解できると言っても大きな部材は30トン近くあったりと輸送するにも見合ったトレーラー、台車を用意する必要があります。

もちろん重量があるものは通行許可を申請する必要があります。

ラフターの組立・作業開始まで

ラフタークレーンの特徴のひとつにアウトリガーと呼ばれる部位があります。

アウトリガーとはクレーン作業を行う際に車体を支える足のような部位になります。

アウトリガーでしっかりと踏ん張るコトで最大の能力を発揮できるようになり、4ヶ所のシリンダーをうまく使うコトで車体を常に水平に保つコトな出来ます。

現場に入り、アウトリガーを張り、ブームを伸ばすコトですぐにクレーン作業を始めることができます。

また、ブームの先にジブというアタッチメントを装着するコトで高さと作業半径をさらに伸ばすことも可能です。

クローラの組立・作業開始まで

クローラクレーンが現場で作業を開始するためには搬入と組立作業が必要です。簡単な工程を書き出して行きます。

  1. 本体をトレーラーからおろす
  2. 左右クローラを取り付ける もしくは作業位置まで張り出す
  3. 下部(ボトム)ブームを取り付ける 別送の場合
  4. カーボディ・カウンタウェイトを搭載する
  5. ブームを任意の長さまで繋いでいく
  6. 上部(トップ)ブームを取り付ける ラフィングタワーの場合はタワーキャップ、ジブ、ストラットなどを組み立てる
  7. ワイヤーを繰り出しフックを取り付ける
  8. 各部の安全装置の取り付け、確認を行う
  9. 周囲の安全を確認しながらブームを引き起こす

となります。あくまで大まかな流れであり、各作業の中にも記載されていない多くの細かな付随作業があり、部材の数だけ搬入車両も現場に入れていく必要があります。

あ、前提を書いていませんでしたが、組立作業用のラフタークレーンなども用意しておかなければなりません。

ラフターではアウトリガーにより車体を水平に保つことができると説明しましたが、クローラには自身を水平に保つ機能はありません。そのためクレーン作業を行なう場所は、クレーン本体と吊り荷重量に耐える地盤・地面を水平に養生しておかなくてはなりません。

では、輸送や組立も大変なクローラクレーンを運用することにメリットはあるのでしょうか?

それは次の能力と得意分野で解説をして行きます。

能力と得意な仕事

まず、能力比較として広く知られているラインナップを比べてみます。

ラフタークレーンのラインナップ

小型ラフター 4.9〜16トン

汎用ラフター 20〜70トン

追加ウェイト付きラフター 80〜100トン

クローラのようにカウンタウェイトを追加して最大能力を発揮するラフタークレーンはここ数年でラインナップが増えてきた比較的新しいカテゴリーですね。

クローラクレーンのラインナップ

汎用クローラ 50〜200トン クレーン&タワー仕様

大型クローラ 350〜550トン クレーン&タワー+追加マスト+追加ウェイト仕様

超大型クローラ 1250〜3200トン 大型の持つ仕様に加え、国内に数台しかないモンスター級

汎用や大型といった表現を使いましたが、実際には明確な区切りはありません。

筆者が、さまざまな仕様のあるクローラクレーンを大まかに分けるとするとこのように表現しただけになります。

定格総荷重表で比較

TADANO GR-700N

KOBELCO 7070G-2

どちらも同じ70トンクレーンであるため最短ブーム構成ではどちらも70トンを吊り上げることができます。

しかし、ブーム長が長くなり作業半径を大きく取るような領域では大きく差が出てきます。

同じ作業半径でどちらがより吊れるのか

例えばどちらもブーム長30mにした場合に、作業半径10mではどうでしょうか。

GR-700Nでは12.5トンとなっていますが、

7070G-2では、2倍近い21.1トンも吊り上げることができます。

同じ重さの荷物を遠くまで運ぶと

今度はGR-700Nを最長44mブームにして、3トンの荷物を何メートル先まで運べるかを見てみると、作業半径24mまでとなっています。

7070G-2を45.7mブームに設定した場合は、3トンの荷物をなんと作業半径34mまで持っていくことができるので、その差は10mもあります。

同じ最大吊り上げ荷重能力をもつクレーンでもクローラとラフターではここまで差が出てしまうのです。

明らかにクレーンとしての性能はクローラクレーンに軍配が上がります。

しかも地面に対する占有面積も、クローラクレーンの方が小さくて済むのです。

GR-700Nが幅8.2m 長さ9.3m必要なのに対し、

7070G-2では幅4.8m 長さ6mと養生する地面もコンパクトですみます。

まとめ

機動性に優れるラフタークレーン

自走し現場に到着後すぐに作業開始可能な高い機動性は右に出るものはありません。

必要な時に現場に颯爽と現れ、キッチリと仕事をこなしヤードへ帰っていく頼もしい存在。

吊り性能に優れるクローラクレーン

輸送や組立に時間は要しますが、基礎土木から建物が完成するまでさまざまな仕様で現場の要望に応える、どっしりと安定したクレーン性能を発揮することができる唯一無二の存在。

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